弱気相場の到来と投資家心理
S&P500が弱気相場(直近高値から20%下がった状態)入りし、
投資家心理を表す"Fear & Greed Index"は極端な恐怖状態を示しています。
この弱気相場の大きな要因は、高いインフレ率と中央銀行の金融引き締めにあります。
弱気相場の判断材料とサイクルの重要性
日々ニュースや材料を集めていると、
これらの要因も値動きの判断材料程度に扱ってしまいがちです。
しかし、背景に存在する大きなサイクルが
今後の投資・トレードの見通しを与えてくれます。
最近、サイクルに関する本をいくつか読んでみたこともあり、
それらを紹介しながら「サイクル」について考えてみたいと思います。
株価のサイクル
サイクルと言ってまず一番意識されるのは株価のサイクルでしょう。
株価の低迷から徐々に上げ始め、
皆がポジションを持つことでさらに値を上げます。
「押し目は買い場」となり、楽観的な意見であふれかえります。
しかし、さらに買う人が現れなくなったところで株価は急落。
恐怖と共に投げ売られ、そのうち注目されなくなり、
株価は長い期間をかけて下げ、サイクルの最初、底値に戻るというものです。
このサイクルの重要な点は、悲観相場での買い増しと、
楽観相場から弱気相場でのキャッシュポジションへの戻し、
あるいは空売り(高値圏の逆張りを意味しません)の
二つの重要な投資・トレードポイントを示唆していることです。
景気・金利・インフレ率から生じる相場サイクル
最近意識されるのは、景気・金利・インフレ率から生じる相場サイクルでしょう。
金融相場→業績相場→逆金融相場→逆業績相場と、
景気サイクルに先行して株価のサイクルがあります。
各セクターや特徴の特定の銘柄が決まったときに活況になることが分かります。
(現在の状況は定義的には逆金融相場となるでしょうか)
相場サイクルに関する書籍の紹介
相場サイクルに関しては以下の本に詳しい記述があります。
『相場サイクルの見分け方 ―銘柄選択と売買のタイミング』 (日本経済新聞出版) : 浦上邦雄
この書籍では先ほどの定番の4つのフェーズの相場概念を詳しく解説しています。
株式投資ではこれらのフェーズを意識することは必須であり、
理解を深めることは中・長期投資の成功につながります。
シクリカル投資とその重要性
サイクルを意識して個別株投資を突き詰めていくと、
その一つはシクリカル投資と言うことになるでしょう。
原材料の需要と価格にもサイクルがあり、
それは景気サイクルに類似した形で循環しています。
シクリカル投資については以下の本が詳しく解説されています。
『景気サイクル投資法 ──裏バフェット型手法とは』 : 鈴木一之
シクリカルセクターの収益構造、シクリカル投資の長所と短所など、
投資を行う上での基本を押さえることができます。
サイクルの不確実性
しかし、サイクルは画一的ではありません。
過去がそうだからと言って、今回はそうなのか。
これについては、以下の本で名言が挙げられています。
『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』 (日本経済新聞出版) : ハワード・マークス, 貫井佳子
「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」
例えば、インフレ率の高さに注目すると、1970年代の相場から学ぶことはあり、
グロース銘柄の躍進と不調に注目するならば、
2000年代初頭のITバブルから学ぶことがあるのではないでしょうか。
しかし、2013年から続く長い金融緩和は、サイクルの期間をゆがめたり、
分類しづらくしているとも言えます。
どこで「韻」を踏んでいるのか、見極める必要があります。
サイクルを意識した投資・トレード
私も、よりサイクルを意識した投資・トレードを行いたいと考えています。
目下、個人的に投資・トレードに活かすとすれば、
エネルギー株の動きに注目しています。
インフレ時、景気後退前のエネルギー株の活況は、
サイクルの典型的な特徴と言えます。
また、景気低迷前に株価は先行して下げますから、
「今が暗くなる時」ということでもあります。
サイクルの揺れ動き
ハワード・マークスは先ほど紹介した本の中で、
「サイクルはある中心点から行き過ぎる形で、振り子のように往復している」
ことに言及しています。
リスクを取るべきでないときにリスク寛容的になったり、
勝ち目がありリスクを取るべき時にリスク回避的になるような、
極端から極端への揺れ動きがあるようです。
サイクルを見極めることは、リスクに注目し、
リスクを取るべき・取らないべき時を逆にしないような
適切な投資・トレードを行えるということです。