「当てもの」的発想とオプショントレード
すぐ後の相場が上に行くのか下に行くのか、
今後の相場の値動きを予想して投資・トレードを行うのは「当てもの」的発想です。
「相場の方向性に賭けていない。当てものではない」と言うかもしれません。
「相場のレンジを想定して、そこから利益を出している」と。
例えば、アイアンコンドルやクレジットスプレッドの取引や、デルタヘッジなどです。
しかし、これらも結局は相場のレンジやボラティリティの方向性を
「当てる」ことに他なりません。
「いやいや、ボラティリティの性質にはエッジがあるから」と言うかもしれません。
確かにそうかもしれませんが、
オプショントレードは本質的にこの「当てもの」と深く結びついています。
オプションは、多様な取引時間軸や戦略が存在します。
値の方向性、時間価値、ボラティリティ、価格帯の相場観などが絡み合い、
それがオプショントレードの魅力を増しています。
0DTEオプションのように毎日取引できる銘柄もあります。
「相場を当てよう」という視点でチャートを見れば、
何かしらのアイデアが浮かぶでしょう。
ですが、自己を律しなければトレード中毒になることは必至です。
「あてもの」的発想の限界と代替案
「当てもの」自体が悪いとは言いませんが、この発想には限界があります。
特に、一回一回の売買の当たり外れにこだわり、
確率思考的にならず近視眼的になる点は問題です。
本質的に「当てもの」要素と結びついているオプショントレードにおいて、
少しそこから軸足を移し、
自身のオプショントレードをさらに向上させる要素を見つけることが重要です。
「エッジを意識する」というのは教科書的ではありますが、
当てものではない確率思考を行うために必要な要素です。
ただ、大数の法則をもとに収束を期待するのは困難であり、
それが「当てもの」思考から軸足を外すことを難しくしています。
(0DTEオプションをメカニカルにトレードしたり、
日経225オプションをExcelだけで検証している方もいます)
「トータルプラス」という考え方はどうでしょうか。
もちろんエッジの存在が前提ですが、
これはトレードの取り組みについて視点を移したものです。
ポジションを持った時の心理変化がトレードに与える影響や、
リスク・資金管理も含まれます。
ポジションの組成、組み換え、建玉操作、
どこまでホールドし利益を伸ばすかなどはトータルプラスを補助する「技術」です。
エッジがなければ技術だけではトータルプラスにはなりませんが、非常に大事な要素です。
技術による上達
「当てもの」的発想では、
相場を当てても技術がなければ利益を取り切れないことが多々あります。
有名な相場師である林輝太郎氏は、分割売買など、
投資家・トレーダーの売買技術の向上の必要性を主張していました。
オプションでは、売買タイミングが非常にシビアな面があり、
ここでも「当てもの」的側面から逃れることはできません。
ただ、分割売買とは異なるものの、試し玉的な小さなリスクパラメータから入り、
ボラティリティやスキューに対してナンピン的なポジション組成をすることも可能です。
オプションにも、上達可能な相応の技術範囲があります。
オプション特有の技術介入余地
「リスクマネジメントのツール」として、
オプションを再度とらえなおすことも有効かもしれません。
オプションのリスクパラメータは、
資金管理や損益変動のコントロールを可能にしますが、
プラスアルファの要素もあります。
それは「相場について行く」ということです。
単純な例では、トレンド相場のオプションの裸買いです。
この場合、自動増し玉装置としての買いポジションが
トレンド相場から十分な利益を引き出してくれるでしょう。
ボラティリティが低下する局面のオプション売りはエッジがあります。
「ボラティリティは前の傾向が継続」する傾向があり、
低下したものはさらに低下し、ベガとセータから利益が出やすくなります。
これもまた「相場について行く」ということになります。
そのツールとしてオプションは利用できます。
また、「まさか」ということに対しても、
起きる前であればオプションは低コストの機会を与えてくれる場合があります。
相場は当てられない
最後に、「当てもの」的発想のアンチテーゼとして、
「基本は相場なんて当たらない」という発想を強調しておきたいと思います。
チャートを見て何かしら相場観が浮かぶかもしれませんが、
それは上下の方向性は5割であり、相場観自体は十中八九当たらないのです。
「それでは何もできないではないか」と言いたくなるかもしれません。
しかし、そのフィルターをきちんと通り抜けた統計的エッジ、
市況変化や需給による歪み、自分と反対のポジションをもつ相手に押し勝てるトレード根拠、
そして売買技術等がサポートしてくれるのです。